価格カルテルの刑事告発は、17年ぶりのことです。住宅の屋根などに使われる亜鉛メッキ鋼板について価格カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は大手メーカー3社を独占禁止法違反の疑いで刑事告発しました。
刑事告発されたのは、東京の日鉄住金鋼板と日新製鋼、それに大阪の淀川製鋼所の3社です。ほかにJFE鋼板が強制調査を受けていますが、最初に自主申告していたため、課徴金減免制度により告発を免れたとみられます。
価格カルテルが結ばれた疑いがあるのは、住宅の屋根や外壁に使われる亜鉛メッキ鋼板です。かつて「トタン」といわれた資材を、錆びに強くデザイン加工したもので、市場規模は1000億円。4社によるシェアはおよそ9割を占めていました。
ところが、2005年頃から原料の亜鉛価格が高騰し、メーカー4社の業績が急速に悪化。カルテルが結ばれたのは、そうしたさなかの2006年6月でした。
各社の部長クラス・課長クラスの担当者らは、JR東京駅に程近い中華料理店に集まり、価格の値上げ幅などを調整していました。
関係者によりますと、4社は2006年4月から6月にかけて価格の調整を行い、鋼板1トンあたりおよそ1万円の値上げで合意し、7月から値上げを実施していた疑いがあるということです。
今回、中心的な役割を演じた担当役員は当時、「この年の利益の半分が吹っ飛んでしまう状況だ」と関係者に話していて、カルテルが結ばれた背景に、原料価格の高騰による収益の悪化があったとも指摘されています。
公正取引委員会は今回、市場規模が大きく、国民生活に重大な影響がある悪質な事案と判断。今年1月から刑事告発を視野に地道な調査を進めてきました。
公正取引委員会の幹部は「談合での刑事告発が続く中、カルテルで告発した意義は大きい」と述べて、業務用ラップ以来、17年ぶりとなる今回の刑事告発の意義を強調しました。
「価格カルテルは、中小零細企業社に与える影響は非常に大きいし、ひいては消費者に与える損害は非常に大きいわけです。今回は、かなり本気でというか、地検と最初からタッグマッチを組んで刑事告発を射程に踏み切ったということは、今後、こういうカルテルをなくす上で非常に大きな意義があったと思います」(元検事の猪狩俊郎弁護士)
今後は、東京地検特捜部が業界ぐるみの価格カルテルの実態解明を行う方針です。(11日20:45)