振り込め詐欺事件の被害者救済で、異例の判断です。「キング」と呼ばれる男を頂点とするグループの巨額詐欺事件で、関係先から3億8000万円もの現金が押収されていたことが分かりました。東京地裁はこの一部を被害者に返還する異例の道筋を示しました。
制服姿で映るこの男。中学校の卒業文集に記された「将来住みたいところ」。「1万円札と500円玉の山の中」。10年あまり後、男は罪を犯してまで、この夢を叶えます。
「電話が鳴ると恐怖です」(女性)
埼玉県に住む70代の女性。1年半前、振り込め詐欺の被害にあい、380万円を失いました。
「子どもが40歳50歳になっても、子どもは子ども」(女性)
この女性をだましたのは、「キング」と呼ばれていた戸田雅樹被告を頂点とする振り込め詐欺集団「キンググループ」。これまでに総額19億円をだまし取っていたとみられています。
警視庁による捜索で、戸田被告の自宅から現金2億4000万円が見つかり、さらにナンバー2の男や早稲田大学の学生だったメンバーの男の自宅などから合わせて3億8000万円が押収されました。
振り込め詐欺の被害金は、どうやって取り戻すのでしょうか。組織的なヤミ金や振り込め詐欺事件の多発を受け、被害回復のための法整備は進められてきています。しかし・・・
「犯罪収益の隠匿ですが、立証には証拠の精査が必要となりますので、証拠によっては立証が難しい場合もかなりある」(振り込め詐欺緊急対策本部統括責任者、山本仁参事官)
自宅から見つかった現金など犯罪収益と証明することが難しいケースでは、没収できず、被告側に現金が戻ってしまう恐れがあるのです。
こうした実態を受け、被害弁護団は、キングこと戸田被告の自宅から押収された金について、被告側に返還されないよう申し立て、今回、東京地裁がこれを認める命令を出しました。
「いろいろな先生方の努力で仮押さえができました。全額戻してもらいたい」(振り込め詐欺の被害者)
弁護団では今後、損害賠償請求などを起こし、順次、被害金を取り戻していきたいとしています。(22日17:35)