来年8月にオリンピックを控えた中国・北京では建設ラッシュですが、その一方で、立ち退きを迫られる住民と開発業者の間でのトラブルが相次いでいます。
こちら、孟麗さん(35)の住宅は事前の通告もないまま、突然取り壊されました。瓦礫の下には家具や家電製品がそのまま埋まっています。
ひとり暮らしの孟さんは、立ち退きの条件として、代わりの家か、それに見合うだけの補償を開発業者に求めてきましたが、交渉がまとまらないうちに自宅を強制撤去されました。
「10人以上の男がハンマーを使って取り壊し、終わった途端に姿を消しました」(孟麗さん)
孟さんは強制撤去に抗議する横断幕を掲げて、応援に駆けつけた家族らと自宅跡に野宿しながら、業者が補償に応じるのを待つことにしました。
「業者が『横断幕を外したら話を聞いてやる』と言うので、『そっちが家を壊しておきながら、条件をつけるのはおかしい』と言いました」(孟麗さん)
北京ではオリンピックの会場周辺を中心にマンションなどの建設が急ピッチで進んでいますが、その一方で立ち退きの際に十分な補償が受けられない住民が続出しています。中には再開発に反対した住民が襲われる事件も起きていて、地元では不安が高まっています。
「私たち庶民はまだ貧しく、立ち退けと言われても新しい家を買う金なんてありません」(住民)
あれから半月余り、業者との話し合いに進展がなかった孟さんは、瓦礫の上にテントを張って暮らしていました。孟さんはオリンピックに伴う北京の発展を喜びつつも、地元の住民を犠牲にした開発手法が、まかり通っていることに疑問を感じています。
「欲に目がくらんだ業者はオリンピックの名のもとに金もうけをしています。こういう人たちにはいつの日か天罰が下ると思います」(孟さん)
こうした強引な立ち退きを防ごうと、今年10月には私有財産権保護を強化する物権法が施行されますが、それまでの間、駆け込み的に再開発が行われ、トラブルが増える可能性も指摘されています。(10日09:50)