「バイオマスプラスチック」という言葉をご存じでしょうか。地球温暖化の原因となる二酸化炭素の削減につながると期待されている新しい「エコ・プラスチック」です。その可能性と課題を取材しました。
機械で山型に加工され、次から次へと押し出されていく大きなシート。この工場で作られているのは、私たちが身近なところで見かける、ある容器です。
愛知・稲沢市のスーパー「アピタ稲沢店」で売られている卵や野菜、カットフルーツのパック。一見、普通のプラスチックに見えますが、実はトウモロコシからできたプラスチックなんです。
このスーパーでは、去年6月からトウモロコシで出来たプラスチックを使用しています。その名も「バイオマスプラスチック」。バイオマスプラスチックは植物が原料なだけに、土に埋めても微生物によって分解されるのが大きな特徴です。また、仮に生ごみと一緒に燃やしてもダイオキシンなどの有毒ガスが発生しません。
さらに、燃やせば当然二酸化炭素が発生しますが、もともと原料の植物が吸収していた二酸化炭素が排出されるだけで、自然界全体での二酸化炭素の量は変わらないというわけです。
環境に優しい素材として注目を集めるバイオマスプラスチック。いいことづくめのように思われますが、思わぬ問題点もあるようです。
「単純なワンウェイ(=使い捨て)だけで走るバイオマスは『地球温暖化に効果があるからいいでしょう、だからバイオマスをどんどんいっぱい使いましょう』というのは、非常に危険な考え方だと」(北海道大学・木村俊範教授)
原料のトウモロコシは、食用のほか家畜の飼料として栽培されています。しかし、最近ではバイオエタノールの原料としても注目が集まり、このまま需要が増えれば価格が一気にはね上がるだけでなく、将来的には食料問題にもつながりかねないと言うのです。
そこでこのスーパーでは、食品パックをリサイクルするために、独特の工夫を行っています。レジでパックを取り外し、その場で回収します。回収されたパックは工場に運ばれ粉々に砕かれます。そして、加工しやすいように形を整えられます。さらに顔料を混ぜ合わせ、鋳型に流し込むと食品パックがごみ箱に生まれ変わりました。こうした再生品は、商品として販売することも検討されています。
しかし・・・
「ある物量がきちっと集まらないと経済活動にはならない。一民間でちょろちょろっとやって、採算がとれるものではない」(リスパック株式会社・奥村喜美常務取締役)
技術的には生産からリサイクルまで実用段階にあるバイオマスプラスチックですが、国内での普及率は1%にも満たなく、回収方法も含めて本格的な取り組みはまだこれからです。(03日14:40)